まのぴらーのひとり飯グルメログ

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【L'ETERRE(神楽坂)】2024年ベストかも。

L'ETERRE(レテール)について

2023年2月にオープンしてからその初年度にミシュラン一つ星を獲得した神楽坂のカウンターフレンチ「L'ETERRE(レテール)」。

オーナーシェフの伊藤良明氏は、パリにL'Archeste(ラルケスト)」をオープンし、そこでもミシュラン1つ星を獲得しております。レテールの料理長は、伊藤氏の修業時代の後輩にあたる田篭彬氏。クラシカルなフレンチを軸としながら、薪や炭、藁を要所に使った料理が特徴なんだそう。また、素材に関しても、テレビや天ぷら屋フレンチ等の名店でおなじみ焼津の老舗鮮魚店「サスエ前田魚店」と、こだわりがありそうです。
夜は2部制となっており、20:30スタートのディナーでお邪魔してみました。

総評・レビュー

2024年ベストかも。

使用している素材はもちろん良質なんでしょう。それらの良さをさらに引き出すべく、薪、炭、藁を使い分けしており、火入れはかなり繊細かつ手の込んだアプローチをしているようにお見受けしました。白甘鯛のしっとりとした身、鰆のレア感など、どれも印象的。

また、それと同時に、鰆が到着した瞬間の藁の心地よい香りや、薪で燻したアイスクリームの薫香など、嗅覚へのダイレクトな刺激も欠かさず。脳の原理を理解している確信犯。

コース全体としては武骨な印象は強めなものの、素材と出自を考えれば、納得感あります。今年食べた中だと、オトワ千葉たかおかが圧倒的ベストだと思っていましたが、食い込んできました。
ところで、見た目は強面ながらも、気さくには話しかけてくれるシェフってズルいですよね、そのギャップ。リピートは確実です。

シェフについて

オーナーの伊藤 良明氏の経歴は以下の通りです(本日は不在)。

千葉・東京学館浦安高等学校からエコール 辻󠄀 東京の辻󠄀フランス・イタリア料理マスターカレッジに進学。1996年に卒業後、フランス料理店『レストランひらまつ』を中心とする飲食店グループ、株式会社ひらまつに就職。東京・原宿や福岡・博多、東京・広尾の店舗で修業を積み、2002年4月からパリ店へ。1年半の研修を経て、北海道・札幌の新店舗立ち上げに参画。2004年10月、16区に移転したパリ店へ異動し、ほどなくシェフとなり、教育にも尽力。2014年7月末に退職し、独立準備を進め、2016年9月、パリに『ラルケスト』を開業。

引用元:https://professions-of.jp/contents/?id=210730221

料理長である田篭 彬氏についてはこちら。

調理専門学校卒業後、全国にレストランを展開する株式会社ひらまつに入社。パリ・東京・京都等の各地のレストラン「ひらまつ」にて研鑽を積む。料理に使う食材の選定のため、自ら生産者のもとへ足を運び、食材の理解を深め、その土地の文化や伝統にも触れることで、料理のインスピレーションを高め、五感で楽しむフランス料理を生み出している。

引用元:https://www.pasonagroup.co.jp/news/tabid312.html?itemid=3976&dispmid=821

座った席がカウンターの中央で、目の前で田篭氏が調理しているということもあり、いろいろ構ってくれました。料理や素材に対するこだわり、気になるレストランなどなど。とても真摯かつ丁寧な物腰の方でした。

お店の雰囲気・外観

神楽坂駅ないしは飯田橋駅から徒歩7~8分くらい、閑静な住宅街にぽつりとあるビルの2階。ちなみに、1階は焼き鳥とワインで有名な「YAKITORI 葵 別邸 BURAI」、若い方々で賑わっておりました。

店内は、カウンターが8席で、他には個室もあるもよう。カウンターからは厨房の様子が丸見え。なお、コース中は、目の前できちんと調理の最終工程(盛り付け)をしてくれるため、カウンターの良さをダイレクトに味わえます。

お客さんは、遅い時間帯開始なのかもしれませんが、この日私1人だけ。のせいか分かりませんが、料理長の田篭氏はじめソムリエの方々は、いろいろ話しかけてくれました。ひとりでも気楽に過ごせますね。

5段階評価

  • 料理・味:★★★★★
  • サービス:★★★★★
  • 雰囲気・居心地:★★★★★
  • コスパ:★★★★
  • お酒・ドリンク:★★★★
  • お一人様率:★★

料金・価格

ディナー、ランチともにおまかせコース1本(全10品)のみで、28,000円。ここ界隈では、そこそこ高い方かなと。

ドリンクは、ワインのメニューとかは特段見当たりませんでしたが、好みに合わせていろいろチョイスできるよう。今回はペアリング(シャンパン×1、白ワイン×4、赤ワイン×1)にしまして、約2万前後。

トータルだと、上記に加えてミネラルウォーターとで、47,000円となりました。料理の味やボリューム、ワイン、サービス等を考慮したコスパは、個人的には良さげ。

料理・コース

・長野 栗カボチャ

栗カボチャのポタージュということで、「甘みが強めな一品目はあまり好みじゃない」と思っていたら、真逆。甘味はかなり控えめで、支配しているのは渋い苦み。ついで、ほのかな塩味。香りはスモーキー。タイはチェンマイのコーヒーのホイップと、上に散っているガリガリとしたカカオニブによるもの。見た目と異なる印象を受けると、期待値が高まります。

・フランスランド 仔鳩

フランスはランドの仔鳩の胸肉をロゼ色にローストしたもの×2切れと、下はセップ茸をコンフィしたもの。一口サイズのフィンガーフードにしては2切れゆえ、ややボリューミーなのが嬉しい。味は、仔鳩の洗練された旨味とセップ茸の旨味が文句なしに美味しいんです。シャンパンが一気に進みます。ところで、お皿は素材の生息地を表しているのでしょうか?ブルーの粒感がやや海を想起させますが、鳩やセップ茸ならボリューミーな低木林や松、杉林なのかな?と思ったんですが。

・焼津 白甘鯛

サスエ前田魚店の白甘鯛。「どうせトレンドの鱗焼きでしょ」と思ってたら、ここも想像とは違い、ベニエスタイル(衣はスパークリングウォーター)で。ゴロゴロしたサイズ感の桜海老とセロリや白ネギを細かく刻んだエスカベッシュとともに。ローストした桜海老の香り、甘み、旨みの後に、エスカベッシュの爽やかさ、そして、白甘鯛のふくよかな身のふわふわとした食感と甘み。身の食感に対して、衣はザクザクではなくサクリとした感じ。変に身と衣の食感をコントラストに仕上げると、身の存在感が希薄になるゆえでしょう。いい意味で期待を裏切られ、かつ多層+奥行きのある展開に、ハマっております。

・焼津 鰆

皮目は炭火・藁で香りを出して、身はレア仕立て。万願寺唐辛子とエシャロットをビネガーでマリネしたもののと、ミモザに見立てた玉子とキャビアとともに。藁の香りがとにかく心地良いですね。鰆の脂の美味しさもさることながら、身質もしっかり(鰆に関しては珍しく活〆しているゆえ?)。そして、それを邪魔せず、かつ飽きさせないマリネの仕立てに感心。コースの1次ピーク。

・苫小牧 北寄貝

肉厚な北寄貝と下にはマッシュポテトと北寄貝の内臓も。ソースはヴァン・ジョーヌとクリームで作ったソース。これ以上美味しい北寄貝に出会えないんじゃないかという位の絶品。この料理を食べたいがために、この店をきっとリピートするでしょう。それくらい濃厚な北寄貝の旨味とクリームソースのまろやかなコク。そして、素材の本質的な美味さを引き出すため、すなわち味をクリアにしすぎないよう、内臓の旨味がビビッドなアクセントに。痺れます。

・焼津 太刀魚

ほど良く外側に焦げ目が入った太刀魚。身の部分はさっと焼いた感じ。その下には細かく刻んだポロネギとズッキーニ。ソースは、スープドポワソン(魚のアラ、トマト、香味野菜)にサフランを加えたもの。骨太でどストレートなソースが特徴的(コース通して唯一ソースが主役とお見受けしました)。去年、池ノ上のペペロッソで食べたツバクエイのソースと酷似していますが、こっちの方が臭みが無かった。

・パン

炭火で焼いた名店パン・デ・フィロゾフ(神楽坂)のアルファバゲットを発酵バターとともに。バゲットは中はモチモチ、外はカリカリ。炭火のおかげで、かなり香ばしい。

・ブルターニュ産仔牛

キレイで均一な桜色が美しい仔牛のロース。下には、ジロール茸とクロラッパ茸(どちらもフランス産)。付け合わせは、セルフィーユの根(ハーブの根っこ)。それをボイル→フリット→バターで焼くという、手の込みよう。ソースは50年近く寝かしたシェリービネガー。仔牛は、しっとりとしていて優しい口当たりで、味わいもクリア。

・〆リゾット

〆のリゾットは量は調節可能で、少な目にしてもらいました。ブイヤベースで炊いたリゾットに毛蟹と半熟卵。魚介の風味が効いており、優しい味わい。

・久美浜 ジャージー牛乳/紅玉

薪で牛乳をいぶして薫香を付けたアイスクリーム。キャラメルソースとトピナンブール(フランスの菊芋)のチップスとともに。もう一方の紅玉は、リンゴの部分はミルフィーユ状になっており、ソルベはパッションフルーツ、マンゴー、バナナ。乳酸発酵のクリーム×レモンの皮。味もそうですが、嗅覚と食感を最後の最後まで、手を抜かずに刺激してくれます。

・コンテ30ヶ月チーズケーキ

30ヶ月熟成させたコンテチーズのチーズケーキ。口に入れた瞬間、溶けてゆきます。濃厚なコクながら、適度な酸味感もあり、食後はさっぱりとしています。

・フィナンシェ/トリュフショコラ+コーヒー

フィナンシェは外側はサクサク、内側はしっとりな食感。ヘーゼルナッツ(?)の香りも素敵。中はバターがじゅわっと。トリュフは、伊藤氏のラルケストでもおなじみなんだそう。美味しすぎます。

コースとしての統一感もすばらしく、嗅覚をダイレクトに刺激してくる料理もただただ美味しかった。使用されている素材、特に魚介類はやはり他とは一線を画しますね。12月31日~2月21日までは、名古屋の方に一時的に出店するらしく休業するもよう。ごちそうさまでした。また、伺いたいと思います。

店舗情報

  • 住所:東京都新宿区神楽坂3-6-53 とぎやレジデンス 2F
  • 最寄り駅:都営大江戸線牛込神楽坂駅より徒歩5分、東西線神楽坂駅より徒歩8分
  • 予約:OMAKASEほか
  • 営業時間:【月・火・木・金】17:30〜、【土・日】12:00 / 18:00〜
  • 定休日:火・水曜日