Élan (エラン)について
フランス語でelan vital(エラン・ヴィタール=生命の飛躍)や、(創造・進化・躍動)の意味を持つ、恵比寿の隠れ家的フレンチのÉlan。完全無農薬の食べるハーブや季節の旬の野菜をふんだんに使った料理や自家製のパンを使ってのパンペアリングが人気のお店です。
個人的には、仕事周りの忘年会シーズンが終わりを迎えつつあり、ようやく行ってみたいフレンチ・イタリアンリストのアタック再開。今回、ディナーのコースで伺ってみました。
総評・レビュー
カラー×野菜バリエーション×パンペアリングのユニークなフレンチ
コースの各料理は「色」をテーマにしており、これまで食べたフレンチのコースの中だと、コンセプトがかなりクリア。メニューを見て「次はきっとこれだな」と1人連想ゲームにハマっていました。当たると嬉しい。
そして、色に紐づく肉・魚、野菜、ソースまでその色に統一しており、見る楽しさも味わえます。乃木坂のフレンチ「タンモア」は、毎月旬や時事ネタをもとにしたコースを考案しておりますが、当店もタンモアも作り手として楽しそうにメニューを考えている姿が想像できます。こういうのっていいですよね。
料理の食材は、その色に紐づく、肉やお魚はもちろんのこと、使用されているお野菜のバリエーションがとにかく豊富。1品目の「赤」には、赤玉葱・赤大根・ノーザンルビー、続く「白」には小カブ・白茄子・カリフラワー、「オレンジ」には、フルーツキャロット・パプリカ・ニンジンなどなど。1品1品に使用されている野菜の情報量がすさまじく、まるで世の中にあるすべての食材を食している感覚になります。
もちろん、情報量だけでなく、各素材の個性を生かしつつ、五味や五感を意識した構成になっており、そのすべてが美味しい。
パンペアリングは、各料理の食材を、料理とは違う手法でパンの具材として使用したり、料理のソースに合うパンを提供したりなどの多様なアプローチ。
これだけ手の込んだコースですが、ワインと合わせて会計は25,000いかないんです。こんな店、他に知らない。
シェフについて
シェフは、宮本英也氏。シェ松尾で21年勤務し、24歳の時にはミシュランガイド1つ星シェ松尾松濤店副料理長に就任、その後の2013年に同店の料理長に就任された方。そして、2015年に当店をオープンしたという経緯です。
伺った際のシェフは、全身真っ黒、かつスタイルが良いので、モデルさんのように見えました。終始寡黙で真剣な表情で調理しておりましたが、お客さんの目の前では笑顔を見せたり、にこやかにお話しされたりなど、ギャップがずるいですね。
お店の雰囲気・外観
恵比寿駅東口から徒歩10~15分程度。周りは住宅街で落ち着いたところ。
(そういえば、当店の2軒隣はコスパが良いオーギャマンドトキオ。中を覗いてみると、金曜の19時台なのに、お客さんはまばら。美味しくて安いお店なだけにちょっと残念…)
お店は、黒・白・シルバーを基調とした色で統一されており、シックでスタイリッシュという言葉がぴったり。新しい家を建てるなら、こんな感じにしてみたいです。席は、カウンターとテーブルで20席ほど。
お客さんは、カウンターは私一人だけでしたが、テーブルはほぼ満席。女性比率が高いですね。
スタッフは、厨房はシェフともう一人。ホールは女性1人の計3人でまわしております。このホール担当の方が、プレゼンが秀逸で、手際も良く、かなりのサービスレベルの高さ。何より驚いたのは、一つも噛まずにプレゼンしていたこと。こりゃ手練れだ。
5段階評価
- 料理・味:★★★★★
- サービス:★★★★
- 雰囲気・居心地:★★★★
- コスパ:★★★★★
- お酒・ドリンク:★★★★
- お一人様率:★
料金・価格
ディナーコースは以下のようなラインナップ。
- 前菜2品・Wメイン含む軽めのディナー(全6皿)+パンペアリング(5種):14,200円
- 前菜3品・Wメイン含む軽めのディナー(全7皿)+パンペアリング(6種):15,800円
※1 上記のコースに、記念日やお祝いの特別メッセージプレートを付加できるようです。
※2 ボリューム等は調節可能
※3 メインは追加料金で牛や鳩に変更可能
フレンチの価格帯としてはリーズナブル。あと、提供されるパンの数を考慮すると、コスパはかなり良いと言えます。
ドリンクは、グラスワイン、ブランデー、ビール、カクテル等なんでもあります。ペアリングに関しても、以下のように、アルコールとノンアルコールでそれぞれ充実しております。
- アルコールペアリング(3グラス):4,600円
- アルコールペアリング(4グラス):5,600円
- アルコールペアリング(5グラス):6,800円
- アルコールペアリング(6グラス):8,000円
- ノンアルコールペアリング(3グラス):2,800円
- ノンアルコールペアリング(4グラス):3,400円
- ノンアルコールペアリング(5グラス):4,000円
1グラス当たりに換算してみると、お安いですね。ちなみに、シャンパン込みでこの値段です。そして、量もだいぶ注いでくれます。
今回、食事は15,800円、ドリンクは5グラスのアルコールペアリング:6,800円にし、水代等もろもろ合わせてトータルで24,860円。都内のフレンチで、たらふく飲んで食べて、この値段になるのはかなりお安い。
料理・コース
・宮崎の一本釣りカツオ 赤色の野菜 ハモンみなかみの生ハム
着皿と同時に、カツオの燻製香が鼻を襲撃、食欲が加速度的に刺激されます。1品目のテーマは「赤」。カツオをはじめ、カツオの下には、赤玉葱や赤大根、ピンク色のノーザンルビー(ジャガイモ)、生ハムの赤で統一したサラダ。ドレッシングも赤いフランボワーズと、徹頭徹尾テーマカラーに沿ったこだわり。お店のコンセプトカラーが無機質なだけに、より赤が際立ちます 。カツオは皮目のスモーキーさと鉄分の旨味がたまりません。それに加え、口の中に広がったフランボワーズの甘酸っぱさが、口の中に残るカツオの後味を浄化してくれます。ペアリングのパンは、サクサクのクロワッサンにカツオのタルタルを挟んだもの。カツオ尽くしで嬉しい限り。
・北海道の帆立かい柱 白色の野菜 ホワイトセロリ
次なるテーマは「白」。大きなホタテの下には、小カブ、白茄子、カリフラワーがごろごろと。スープは、上記の白い野菜たちとアサリで作ったスープ。スープはアサリの旨味が凝縮されており、くっきり濃厚なお味。ホタテのゴムライクな食感とカリフラワーをはじめとする硬質なお野菜の食感のコントラストも好きです。パンはミルクの白パンに、ホタテと玉葱のタルタルを挟んだもの。パンペアリングはここまではかなりド直球なアプローチ。美味しい。
・鴨のフォアグラのソテー 紫の野菜 トリュフ
次は「茶色」。と言いながら、お皿を支配するのは白色で、コースの中では唯一テーマカラーがぼやけております。料理は、鴨のフォアグラをソテーしたもの。ソースは2種類で、マディラ酒を軸にしたものと泡状の方は和栗とトリュフ。フォアグラの下にあるお野菜は、和栗、ブラウンマッシュルーム、ゴボウ。和栗の上質な甘さとゴボウの気品のある香り+歯ごたえのある食感が印象的で、フォアグラを食べた後の舌に残るあの感じを、カイワレが解消してくれます。秀逸。パンはブリオッシュで、トリュフと和栗のペーストを挟んだもの。ここで気づきましたが、けっこうなボリュームでこの先を食べきれるのか、不安になってきました(いい意味で)。
・静岡の富士サーモン オレンジの野菜 オマール ますのいくら
次は「オレンジ」。使用しているお野菜はフルーツキャロットやパプリカ、ニンジン。ソースはオマール海老を使用したもの。そのテーマの通り、富士サーモンといくらの自然本来のオレンジが美しいです。富士サーモンはミキュイライクで、えげつない塩味が一切なく、何切れでも行けそう。いくらは小粒ながらかなり弾力があります。パンはフランスパンで、外はカリッと中はしっとりで、オマール海老のソースにつけて食べるという仕立てで、これまでとはちょっと趣向を変えております。
・岩手のほろほろ鶏 緑色の野菜 グリーンマスタード
メインは「グリーン」。野菜は、緑色の大根と万願寺唐辛子。万願寺唐辛子の中には地鶏のコンフィがIN。ソースは、グリーンペッパー×マスタードと、緑の野菜らをピューレをにしたものの2種類。ほろほろ鶏は皮目を香草パン粉焼きにしております。ほろほろ鶏の身のふくよかな食感と旨味に加え、山椒っけのあるピリッとした辛さのあるハーブが特徴的。ちとピューレのソースの存在が希薄でしたが。万願寺唐辛子は、辛さの中に見え隠れするほんのりとした甘味が際立ってます。パンは、緑の野菜をタルタルにしたサンドイッチ。もうお腹いっぱい。
・山梨の黄おう 長野の洋梨 くれーむぶりゅれ 瀬戸内のレモン
デザートは「黄色」。素材は料理名に記載の通り+アカシアはちみつ。最後の最後まで、テーマカラーに沿った構成は見事の一言。もちろんお味も。そして、まだパンもあります。クリームチーズとリンゴのジャムを盛り込んだメレンゲのパン。しばらくご飯は食べなくていいと思える位、お腹いっぱいです。
・フィナンシェ ショコラ+アールグレイ
ものすごい情報量とカラーバリエーションに圧倒されっぱなし。でもって、料理はすべて美味しい。幸せです。ごちそうさまでした。
店舗情報
- 住所:東京都渋谷区恵比寿3-28-7 ミューリエ恵比寿 1F
- 最寄り駅:JR山手線ほか恵比寿駅東口より徒歩10分
- 予約:食べログほか
- 営業時間:12:00 - 15:30(L.O.13:00)、18:00 - 23:00(L.O.20:00)
- 定休日:不定休