総評・レビュー
シェフの底知れぬ探求心
乃木坂と赤坂の間にひっそりとたたずむフレンチレンストラン。
シェフの田中いずみ氏は、調理師学校を卒業後→国内レストランで修業→渡仏して修行→帰国後に当店をオープンという経緯です。
コースとペアリングを通しての感想は、やはりコスパの良さでしょう。たらふく食べて飲んで、総額15,400円は安すぎます。都内だと、これだけのクオリティとドリンクでたいてい25,000~35,000円のレンジです、ありえません。味イマイチでSNS映えばかり意識している銀座一丁目のとある劇場型フレンチ勢はぜひ見習ってほしいところ。
味の感想としては「面白い」の一言につきます。
改めて、素材の良さを最大限に引き出すという概念に基づく日本料理勢にはできない「枠の広さ」を感じました。前菜2品目のイカとミノのソーセージの独特な組み合わせ、旨味を前面で食する仔牛をあんなにも優しく温かい味付けに変化させる手腕、タダモノではありません!相当研究しているだろうし、何より献立を作っている時のシェフの楽しそうな姿を容易に想像することができます。
…とはいえ、前菜2品の個性が強すぎるせいか、続く魚料理→メインの肉料理→チーズ→デザートの食後感は「爽やかさ(酸味)」で終始しているところは唯一気になりどころ。せめて、デザートのイチゴをバナナに変えて、甘味を打ち出したら味のバリエーションがマシマシになるでは?
全体的に、コスパの良さ、味のユニーク性という2点が競合優位性でしょう、満足な1日でした。
お店の雰囲気・外観
店内は無駄な装飾等は特になく洗練されています、BGMはクラシック。壁やテーブル、イスは白を基調としており、仕事を途中で投げ出してきて周囲からヘイトオーラを浴びた私のドス黒い心を灰色くらいにしてくれます。
席はカウンター4席、テーブル席×3つの10席ほど。今回はテーブル席に通されました(一人客なのに大変申し訳なく思っております)。
お客さんの層は、私以外は女性の2人組。
スタッフは、田中いずみシェフとホールの方が2人で回していてます。ホールスタッフの方(ソムリエ?)は、心遣いや言葉遣いの節々に大人の余裕があります、分けてほしいです。
5段階評価
- 料理・味:★★★★
- サービス:★★★★
- 雰囲気・居心地:★★★★
- コスパ:★★★★★
- お酒・ドリンク:★★★★
料金・価格
月替わりのお任せコース(全8品):10,000円。そーとー安い。アルコールペアリングは世界各地から選定したものAとフランスから選定したものBに分かれます。
Aは、5杯:4,300円、多め:5,400円、少なめ:3,800円となっております。
Bは、5杯:4,900円、多め:6,100円、少なめ:4,400円です。
今回はAの多めにしました、総額:15,400円。そーとー安い!
なお、コースの中身や料金は適時インスタ等でも更新しているみたいです、毎月変わるみたいですね。
料理・コース
2月は大地(テール)と海(メール)をテーマにしています。
・新玉ネギ、ウニ、鶏のショーフロワ
グラスは、うにのサバイヨン、新玉ネギのヴルーテ、鶏のコンソメジュレ。カップは、うにのソース、新玉ネギのロースト、鶏のチップス。同じ素材を冷と温で楽しむことができるというユニークなアミューズ。うにはそれほど主張が強くなく、新玉ネギの甘さが際立つ一品です。
・ブリオッシュとリエット
ここ最近食べたブリオッシュの中でBEST!高貴な香りがとても印象的で、下賤な私の品位を高める作用がります。ぶっちゃけリエット(豚と鱈の塩漬け+玉ネギ+ラード)は無くても十分です
・イカとミノのソーセージ、牛ハツのスモーク、塩辛のクリーム
コースの中で一番個性的な一品。ソーセージは噛めば噛むほどイカとミノの味が溢れ出て味がより強固になります。牛ハツは一見淡泊な味わいですが、塩辛のクリームと合わせることで塩味と旨味が引き立たてられます。個性の強い者同士が殴り合いのひたすら喧嘩をしている感じ。
・穴子とブーダンノワール、リンゴのソース
穴子の表面はカリカリ、中はふっくらという火入れがスバラシイ一品です。とはいえ、穴子は主役ではなくブーダンノワール(豚の血のソーセージ)のエッジが効いた味が全体を制しています。リンゴとシナモンのアクセントで、まろやかさ・爽やかさをアドオン。
・ヒラメ・デ・ラビオリ、ベーコンのスープ
本日のBEST。ベーコンと野菜の出汁のスープの優しく慣れしたんだ味から始まり、ヒラメの旨味を堪能した後、リコッタチーズの濃厚な味が溢れてきて、最後には口いっぱいにハーブの爽やかさが広がるという、味の変遷が多様的な一品。
・仏産仔牛のローストと煮込み、ムール貝のマリニエールソース、伊予柑の香り
こんなにも優しい仔牛のローストは生まれて初めて!貝の煮汁、白ワイン、ハーブ等のマリエールソースが仔牛の旨味を優しく包み込んでくれ、最後には伊予柑の爽やかさで〆るという一品。ボリュームは相当ありますが、胸やけや胃もたれ等感じさせずにペロッと食べれちゃいます。
・青ノリのシフォンケーキ、モンドールのエスプーマ、洋梨のソルベ
これはちょっと???な感じでした。というのも、前菜~メインにかけて、十分塩味は味わったから。青ノリの塩味はちとお腹いっぱいです。洋梨の爽やかさも際立ちますが、酸味も十分かなぁと。
・発酵バターと海塩
バターがたっぷり染み込んだ焼きたてのクレープ+海塩がお皿いっぱいに展開。クレープの中には濃厚なピスタチオのアイスと苺。個人的には酸味に食傷気味だったので、苺ではなくバナナが良かった。とはいえ、美味しい。
・見た目テール・メール(お茶菓子)+エスプレッソ
トロピカルフルーツとチョコミントの組み合わせ。
1品1品のポーションは相当あり、お腹はパンパン。
ごちそうさまでした。
店舗情報
- 住所:東京都港区赤坂8-13-19 インペリアル赤坂壱番館 B1F
- 最寄り駅:東京メトロ千代田線乃木坂駅徒歩6分、東京メトロ千代田線 赤坂駅 徒歩7分、都営地下鉄大江戸線 六本木駅 徒歩9分
- 予約:食べログほか
- 営業時間:[月・火・木・金]18:00~19:30L.O.、[土・日]12:00~13:00L.O./18:00~19:30L.O.
- 定休日:水曜日